当流では昔ながらの独自の様式で、入門してから最初に取得する初伝から始まり、中伝、小目録、中目録、大目録、小免許、免許皆伝と七段階の許状を有する免許制度となっている。昭和五年、ここ静岡県静岡市清水に十四代宗家勝瀬光安景正が碧雲館道場を構えてから現在十五代宗家勝瀬善光景弘に至るまでの76年間(2005年現在)で免許皆伝者はわずか四人。上にいくのがどれほど難しいか理解していただけるであろう。毎年1月3日に清水の碧雲館本部道場で行われる初稽古には、全国の支部道場からも多数の門人が集まる。許状取得者がいる場合、ここで宗家から直々に全員の前で許状が手渡しされることになる。当代である十五代宗家の各門人への教授方法は、昔から寸分変わらぬ合理的かつ実戦的方法である。すなわち、鞘から抜き放った刀の切先が相手よりも早く、そして的確に急所を捉えることだけである。その技術に加えて常に『覚悟』という人間の内面的な気持ちが伴っているかを見逃さずに評価している。それらには現在社会におけるところの『武道』のみが持ち合わせている『武道教育』にも位置することになるであろう。
中伝許状
許状箱 許状箱中
上の許状は、私が本年2005年1月3日に頂いた中伝の許状である。書かれているもの全ては十五代宗家の手書きである。実は、初伝は頂かずに、いきなり中伝を頂いた。そしてその中伝を頂くまでには丸々三年間の修行を費やした。これが遅いのか、早いのか、自分では判断不可能なわけだが、各人がしっかりと意味を持って修行する時間はきっと瞬く間に過ぎてゆくに違いない。
村田泰裕 記